DISC REVIEW くるり

京都音博での交流が生んだ南米の才能とのコラボレーション

京都音博での交流が生んだ南米の才能とのコラボレーションの画像
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くるりは自分たちが気に入ったアーティストをその(日本での)知名度にとらわれず京都音博に出演させ、日本のリスナーに向けて紹介してきた。近年でもチリのカミラ・メサ、イスラエルのシャイ・マエストロ、台湾のクラウド・ルー、インドネシアのディラ・ボンなどなど、ジャンルも地域もばらばらだ。今回くるりはそんな招致を機に親交を深めた3人のアーティストとのコラボ音源を発表した。共に楽曲を制作したのはアルゼンチンのトミ・レブレロ&ロリ・モリーナ、ブラジルのアントニオ・ロウレイロと南米の2組。アルゼンチンとブラジルはお隣同士で、音楽的にも交流が盛んで影響を受け合っていたりはするが、それぞれスペイン語とポルトガル語で言語は違うし、音楽的にもカルチャーは異なる。しかも、この3人はそれぞれ音楽的なキャラクターが全く異なる。そんなアルゼンチンとブラジルのアーティストに同じ楽曲を渡して、それぞれに自由に歌や演奏を乗せてもらって、リモートで作ったのがこの2曲。ここで岸田は作編曲とプログラミングに専念し、歌も詞も南米の3人に委ねた。曲名が違うのはそれぞれの曲の歌詞の違いによるもの、だろう。地球の裏側で活動するアーティストたちがくるりの楽曲の上で自身を存分に表現していて、それぞれの曲はまるで彼らのが楽曲のようでもある。ただ、彼ら自身の作品を聴いてみれば、この曲が彼らの中には無かった“くるりとのコラボだからこそ”の曲であることがわかる。これまでのくるりとは少し違う。だけど、くるりにしかありえない。これはくるりにとっても新しいチャレンジなのかもしれない。

 


 

grito latino (feat. Tomi Lebrero & Loli Molina)      

アルゼンチンのタンゴの主役と言えばバンドネオン。トミ・レブレロはそのバンドネオンを既存の枠にとらわれない方法で追求している奇才だ。ロリ・モリーナはグローバルな感性のポップなシンガー・ソング・ライターだが、その音楽の中にはアルゼンチンに根付くフォルクローレの香りが少なからず漂っている。そんなアルゼンチンの2人がくるりの楽曲の上で美しいハーモニーを奏でる。慎ましく抑えめなロリ・モリーナの歌うメロディーに自身の声を重ねた瞬間に感情が立ち上がり、その重ね方の変化でその情感は一気に豊かになる。そこにトミ・レブレロの声が、そしてバンドネオンが加われば、色彩も増え、更に複雑な表現へと昇華される。そういえば、21世紀以降のアルゼンチンで生まれている新世代のフォルクローレにはこんな刺激的で美しい声と楽器によるアンサンブルが聴こえていた。くるりはそんな2人の魅力が引き出されるような仕掛けをこの楽曲の構造の中に仕込んでいたのかも知れない。

Text:柳樂光隆
 



Comment(Tomi Lebrero)
 

この曲を初めて聴いた瞬間から魅了されてしまいました。僕はベースラインで曲を構成している楽曲が大好きなんです。そして、世界の他の地域の人が想像している「ラテン音楽」を聴くのは、とても面白いですね。

僕にとって、くるりと一緒に音楽をつくるという作業はとても重要な出来事です。今回は作詞をするうえで、その詞世界の解釈にも自分なりにベストを尽くしました。この「grito latino」の歌詞では、所謂ステレオタイプにならないようにラテンの精神を表現しようと思いました。

幸運なことに、最終的に完成した曲を聴いたときには、本当に楽しむことができましたし、このような美しい曲に参加できた事に対しては、喜びと誇りが入り混じった気持ちになりました。
僕はこの楽曲にとても満足しているんです。
    
僕からくるりへのメッセージとしては、「このような機会を与えてくれて本当にありがとう、あなた達はとても寛大だ!」ということです。僕はあなた達の音楽が大好きで、あなた達は僕の友人であり、これからも一緒に音楽をつくり、人生の終わりまで友情を分かち合いたいと思っています。そして、もし死後の世界が存在するのであれば、死後の世界でも!じゃあまた!I love you!

 

The song captivated me from the first moment. I love the songs where the line of bass is constitutive to the song. In addition, it immediately caught my attention, because it is something that amuses me, listening to the imaginary of "Latin music" from people in other parts of the world. 

For me it's very important making music for, or with Quruli because I know they are very responsible about music. I really try to give my best in the lyrics and also in the interpretation. The challenge in the lyrics was to make a song that named something of the latin spirit, trying not to fall into stereotypes.   

Fortunately, when I heard the song finally made, I really could enjoy it, and I felt a mixture of joy and pride for being part of such a beautiful  song. In short, I'm very happy with the result!

My mane message to Quruli is really thanks a lot for this opportunity, you where very generous! You know I love your music, you are my friends and I really hope making music together and share friendship untill the end of our lives. And if  afterlife exist, also in afterlife! Je! I love you!
 

 

 CREDIT 

Words by Tomi Lebrero
Music by Shigeru Kishida
Arranged by Kishida / Sato and Tomi Lebrero

Shigeru Kishida: Programming 
Masashi Sato: Fretless Bass
Fanfan: Trumpet
Tomi Lebrero: Vocal, Bandoneon
Loli Molina: Vocals
Yasuhiro Nozaki: Piano
Cliff Almond: Drums
Instruments Technician: Toshiaki Sujino (Mew)

Recorded by Yoichi Miyazaki, Mitsuhiro Tanigawa, Daisuke Koizumi, Masashi Sato, Tomi Lebrero, Hernan Hecht
Recorded at FREEDOM STUDIO INFINITY, Studio First Call, music studio SIMPO, STUDIO 2034, Masashi’s Home, Tomi’s Studio, Hh Studio in Mexico City
Mixed by Dietz Tinhof at Immersive Music Mix