LIVE REPORT

ワンマンツアー2023夏“baby” 新曲尽くしのファイナル東京公演レポートを公開!

2023.10.19


リュックと添い寝ごはん

ワンマンツアー2023 夏 "baby"
2023年9月27日(水)@東京・Spotify O-EAST

REPORT | SETLIST


 

ツアーを周るたび、増えるファミリー!
リュックと添い寝ごはんワンマンツアー2023夏“baby”
新曲尽くしのファイナル東京公演レポート

 

松本ユウ(Gt / Vo)が選んだ会場BGMに、幼児の声の注意事項アナウンス。期待値が上がった会場に特別なSE、ザ・ロネッツ“Be My Baby”が鳴り響く。2023年9月29日(水)、自身最大規模のワンマンツアー2023夏"baby"で全国8箇所を回った彼らを待っていたのは〈Spotify O-EAST〉満員の観客だった。

初ワンマンでも1曲目だった“生活”のカウントダウンが聴こえて、大躍進を続けているリュクソの道程に思いを馳せた人も多いだろう。観客の笑顔と手拍子で2曲目“青春日記”は初期衝動さながらの勢い。「今を進む全ての人に歌います!」(松本)と始まったのは今年6月にリリースされた“反撃的讃歌”。「声を止めないで / 足を止めないで」という力強いステイトメントは、活動を止めず、日々歩み続けてきた彼らが鳴らす結成初期に回帰するようなバンドサウンドで説得力を帯びていた。2023年夏、たくさんのフェスに出演してきたことも相まってか、ワンマンライブのこの日は良い塩梅で肩の力が抜けていることを感じる。

 

 


アップテンポなポップソング“PLAY”に続けて「最後まで、自由に楽しんでほしい。ここにいるみんなはファミリーだから、恥ずかしがらずに好きに踊って、好きに歌って、自由に楽しんでください!」(松本)と始まったのは横揺れサマーソング“ホリデイ”。そして堂免英敬(B)のベースに併せて、“everyday”のコールアンドレスポンスの練習だ。初めから大合唱だったが「ファイナルだからもっと声出るでしょ?自由に楽しんで、憂鬱な感情を解放する日だから、今日は!」とさらに煽る松本。それに応える会場のみんなは、各々の感情を詰め込んで叫ぶ。生活に寄り添うリュクソの曲は、きっと日々のいろんな記憶を呼び起こしたに違いない。シンガロングに包まれたバンドの演奏は幸せな音を奏でていて、ファンを「ファミリー」だと親しみを込めて呼ぶ彼らの真骨頂を見た。曲の終わりには「自分たちに大きな拍手を!」と、ファミリーを主役にすることも忘れない。

 

 


そして1st EP『青春日記』から“手と手”、2ndアルバム『四季』から“サマーブルーム”と、クリープハイプやandymoriを始めとした00年代以降のロックバンドを彷彿とさせる人気曲が続く。これらの曲が10代と20代前半のファンに受け入れられているフロアを見ていると、さらに幅広い世代に受け入れられるポテンシャルも感じた。

「babyツアーファイナルへ、ようこそ!すごい人だね〜。あかりさん、緊張してますか?」と松本が宮澤あかり(Dr)に話を振ると宮澤は「いや、緊張してないです。勝手に緊張させないでください」と冷静な対応で笑いを誘う。さらにMCを用意してきたという堂免は、前回のツアーファイナルでメンバーからもらったTシャツの話で、場を和ませる。このTシャツを松本も部屋着として愛用しているというエピソードの、仲の良さに顔がほころぶ。

 

 

 

今回のツアーは、「baby=新曲」をたくさん演奏するコンセプトだ。そのコンセプトが伝えられた後、あたかも新曲かのように弾き語りで披露されたのは“積水ハウス”のCMソングだった。みんなが住む街に想いを馳せるための、粋な画策だと思っておこう。次に少し切ないメロディーが懐かしいミドルチューン“わたし”、さらにツアー会場限定EP『BABY TUNES』に、松本の弾き語り(house ver.)が収録されている新曲“電波塔”をゆったりと聴かせる。星野源“くだらないの中に”を彷彿とさせる、日常のさりげない景色が美しく感じられるような曲だ。そして波の音が聴こえたと思ったら“渚とサンダルと”で恋する女の子の気持ちを歌う。プリンセスプリンセス“DIAMONDS”のメロディのリファレンスも印象的な“あたらしい朝”では青春のきらめきを見事に音で作り出し、朝日を思わせる照明が眩しくきれいだった。こだわりの照明は、様々な景色を鮮やかに映す彼らの曲の魅力を際立たせる。

 

 


さて、この日2曲目の新曲“恋をして”は、“Be My Baby”と同時期に作られた、ど直球ラブソングだ。これまでラブソングがなかった彼らには珍しく、2曲連続のラブソングリリース。「恋をして変わる世界に / 君と僕がいればそれでいい」という。『BABY TUNES』に収録された弾き語り(house ver.)でしっとりと歌い上げているが、バンドバージョンは松本の歌も力強い。シンプルな構成と目まぐるしいリズムの展開はより勢いを助長しているし、ぬんのギターソロの無双は、過去イチではないだろうか!どこか切ないメロディラインと「恋をして変わる世界に / 君と僕がいればそれでいい」をはじめとするまっすぐな歌詞がJUDY AND MARYの“BLUE TEARS”を思わせる。そしてラブソングは続く。お待ちかね、2ヶ月連続シングルの第二弾として7月にリリースされた“Be My Baby”が始まった!テレビ東京系ドラマNEXT『みなと商事コインランドリー2』のエンディングテーマ曲となっていたこの曲で彼らを知った人も多いのだろう、フロアはこの日一番の盛り上がりを見せた。

そしてまだまだ新曲は止まらない。“天国街道”は、中華料理店で流れるようなギターリフで始まり、サビではつい飛び跳ねてしまう裏拍のリズムがエキサイティングなダンスナンバー。音源も出ておらず、ほとんどの人が初めて聴いたはずだ。しかしそんなことは関係なく、「踊れるかい!」(松本)に応えるようにフロアは大盛り上がり。このままみんなで踊り続けたらライブハウスの床と天井が抜けて、天国に届くのではないか?と思わせるような、パワーの坩堝だ。ライブを重ね、ツアーも通してより一層メンバー同士のグルーブが増したのだろう、4人のリズムは息がぴったり。「平均年齢21歳のバンド」といいながらも、初期衝動で走り続ける時期はとうに過ぎた、実力派だと断言する。歌詞の語感と各パートのフレーズ、そして演奏力、メンバーの個性的なキャラクターが集まれば、もう怖いものなし!これぞ世界で通用する中華料理のような、誰もが大好きなロックバンドが作るダンスチューンの誕生だ。これからフェスではフレデリック“オドループ”やKANA-BOON“ないものねだり”、UNISON SQUARE GARDEN“シュガーソングとビターステップ”に続く、世代を超えた旋風を起こす“待ってました!”曲となるに違いない。

 

 

 

堂免「前回の“四季”ツアーは新たな出会いを探して回っていたけど、今回のツアーは、誰々さんに会いに行く、という感じでした。安心感があったんだよね。」

松本「今回披露した新曲と一緒にリュックと添い寝ごはんも成長していくので、ちゃんと並走してね!」

ぬん「ここ(Spotify O-EAST)に立つのが、夢だったんですよ。次はもっと大きいステージ行きたいので、みんなついてきてくれますか!」

宮澤「友達に無理やり連れてこられた人もいると思うんですけど、来てくれたことに、心の底から、足の先から身体全部、すごい嬉しい気持ちです!それに私が作ったグッズをみんなが持ってくれていたりするわけじゃないですか。本当にハッピーな人生だ!みんなで“ハッピー”と言いましょう」

宮澤の声がけで会場が「ハッピー!」と叫ぶ、気の抜けるようなアットホームなやり取りで、会場は改めて笑顔に溢れる。4人の想いが伝えられた後は、ライブに欠かせないアンセム“Thank you for the Music”で終盤へ。「旅の途中に出会ってくれて僕は幸せです / どうかこれからも / あなたの心にいさせて」という歌詞、そして間奏で伝えられた「寂しくなったら、いつでもここに帰ってきていいから!」という言葉は、彼らが一番伝えたいことだろう。誰もが気軽に戻ってこれる安心溢れる温かい空間。リュクソのライブは、一度結ばれたら切れることはない、血縁くらい強固な繋がりが生まれる場所だ。このツアーを通して各地に生まれた新しい“baby”も加わって、彼らのファミリーは、これから増える一方なのだ。

 

 

 

ここからラストスパート!“ノーマル”で会場が一つになったままに“疾走”、そして“グッバイトレイン”では曲中に宮澤からサウナ熱波師の資格を取ったというサプライズ報告もあり、最後まで驚きと楽しさのインフレーションの中で本編を終えた。

 


 

 

さて、客席からはアンコールを求める拍手と“everyday”の大合唱が止まらない。その声を聞いて登場した宮澤と堂免の物販紹介コーナー「宮澤ショッピング」が終わると、松本とぬんもステージに戻り、2つの重大発表がされた。“恋をして”と“天国街道”の2曲連続リリース、そして2023年11月10日(金)結成6周年の当日、初ワンマンの会場でもあった〈Spotify O-nest〉で結成6周年ライブ "home room" が開催されるというのだ。小さい会場で、プレミアムな1日になることは間違いないから、逃したくない。

 

 

歓声が鳴り止まない会場で、最後に披露されたアンコール。前回の“四季”ツアーでは「くじ」で決めたが、それを受けて今回は「ヤジ」で決めるという遊び心。選ばれたのは、この日2回目の“疾走”だった!そして流石に終わりかと思いきや、「EAST、まだまだ行けますかー?(松本)」の煽りに続いて、なんと3回目の“疾走”が始まった!どんどん上がるBPMに、流石に息切れそうだったが、どうにか一緒に走り切った。体育祭を終えた後のような達成感だ。



この日松本は「自由に歌って、踊って」と何度も繰り返した。彼らは自身の輝いている姿を通して、自分の頭で考え、自分だけの選択肢を選んで生きることの素晴らしさを伝えている。懸命に生きて、それでも迷った時にはリュクソのライブに戻ってくるといい。そこにはそれぞれ、一所懸命生きている人たちが集まっている。安心して帰ることができるホーム画できて、前を向く勇気をもらった“baby”ツアーファイナル公演だった。ありがとう!



 


Text:柴田 真希
Photo:renzo masuda

 

 


SET LIST

 

1. 生活
2. 青春日記
3. 反撃的讃歌
4. PLAY
5. ホリデイ
6. everyday
7. 手と手
8. サマーブルーム
9. わたし
10. 電波塔 (新曲)    
11. 渚とサンダルと
12. あたらしい朝
13. 恋をして (新曲)
14. Be My Baby
15. 天国街道 (新曲)
16. Thank you for the Music
17. ノーマル
18. 疾走
19. グッバイトレイン

EN1. 疾走
EN2. 疾走
M18. Smile