DISC REVIEW

3部作完結編にして新機軸!まさかの異種格闘技戦のような熱いラップバトル!

  • eijun「修羅場とlover (feat. 佐々木亮介&さかな)」
  • 2022.10.26 RELEASE
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作詞・作曲:eijun
Vocal(りすちゃん):さかな (https://twitter.com/sakana_tohno)
Vocal(元カレ):佐々木亮介(https://twitter.com/ryosukeafoc
Illustration:INPINE (https://twitter.com/INPINE_JP
Movie:なかにし(PHZY)(https://twitter.com/naka_2_shi)



MUSIC VIDEO

 

 




SPECIAL INTERVIEW

 

2021年4月にスタートしたeijunプロジェクト(#エイプロ)は今夏から2 ndシーズンに突入している。独自のポップセンスで共感性の高い多彩な恋愛ソングをハイペースでリリースし続けているeijunだが、2ndシーズンのはじまりは「3部作」というコンセプトを掲げ、「りすちゃん」を主人公に元カレとの恋愛模様が繰り広げられている。1作目『ねたふりす (feat. さかな)』は、ひとつの恋の終わりを淡く爽やかに綴る青春ポップ。そして2作目『恋愛くたばれ同好会(仮) (feat. さかな)』ではりすちゃんがまさかの大暴走を見せリスナーを驚かせた。そしてついにできあがった3部作完結編がこの『修羅場とlover (feat. 佐々木亮介&さかな)』だ。それがまさかの男女ツインボーカルによるラップバトル! しかもa flood of circleの佐々木亮介をフィーチャーし、さかなと熱い掛け合いを展開。一度耳にしたら口ずさまずにはいられないフック、そして両名のスキルフルかつ異種格闘技戦のような熱いラップバトルはまさしく必聴ものである。このエポックメイキングな楽曲はいかにして生まれたのか。もはやeijunにしか作り得ないポップワールド。その制作の裏側に迫る。



 

──「りすちゃん3部作」、ついに完結ですね。2作目の『恋愛くたばれ同好会(仮)』も驚きでしたが『修羅場とlover』はさらなる新機軸。どんな着想から作り始めたんですか?

「前回までのインタビューでも話したとおり、まず3部作というガワだけ決まった状態で作り始めたので、ラスト3作目はどうすればいいのか悩んでいて。バラードのような曲で大団円的なオチをつけることもできそうだったんですけど、ストーリーがちゃんと着地するものよりも、エイプロはカオスなまま終わるほうが、ソロとしてはチャレンジしがいがあるなと思いまして。それで3部作を『完結する』ということを放棄するところから今回の曲は始まりました」

 

──最初はやはり、物語が明確に着地するというほうを考えたんですね。

「考えていましたね。だからなんとなくオペラのフィナーレのような感じや、最後はビッグバンド風の曲調でレビューっぽく華やかに終わるとか、そういう方向性を考えていたんです。あとストーリーとしては元カレのほうが死んじゃうとか(笑)」

 

──なるほど(笑)。

「男性が死んで切なくなるか、死んで生き返ってハッピーに終わるか、そういうストーリーも考えたんですけど、オチをつけるためにそういうことをするのも自分っぽくない気がして、その方向性は捨てたんですよね。とにかく1曲目2曲目とは違う面白みのある3作目を目指せばいいのかなと思いまして。だったらやったことがないことをやろうと。そういえばデュエット曲はまだエイプロではやってないし、デュエットだから男女がいいかなどと考え始めて。それで『りすちゃんが元カレと再会する』という企画が浮かんで、だいぶ膨らんでいったという感じです」

 

──男性ボーカルを佐々木さんに依頼しようと決めたのはどの段階で?

「まだ曲はできてない企画段階ですね。りすちゃんが元カレと会って結局は痴話げんかになるというところまで思いついて、喧嘩だったらラップバトルみたいになったら面白いなと思って。ラッパーの人を呼ぶのもいいかなって思ったんですけど、それはエイプロファンにとっても、THE BACK HORNからエイプロを聴きにきた人にとってもあまり馴染み深くないから、馴染みが深そうな領域の人で誰かいないかなと考えてたんですよ。そこで、前に佐々木のポッドキャストに出させてもらったときに『エイプロでやりたい』と言ってくれてたので、それで彼の存在がふと頭に浮かんで。a flood of circleの曲でもラップ的な歌い回しのパートがいっぱいあるし、ヒップホップも好んで聴いているので彼しかいないと思って打診させてもらいました」

 

──ヒップホップの造詣はすごく深いですもんね。その佐々木さんとさかなさんのツインボーカル。両者の掛け合わせがすごく面白い化学反応を起こした楽曲だと思います。レコーディングはどのように?

「さかなさんはいつも自分で録ったものを送ってくれるので、俺がスタジオでの歌録りに立ち会ったのは佐々木のレコーディングだけです。まず、さかなさんに仮歌でツルっと雰囲気だけ歌ってもらったやつをもらって、佐々木にはそれを聴きながら歌ってもらいました」

 

──とても臨場感のあるミックスで、ふたりの掛け合いがその場で行われているように感じました。そしていろんな声が入っていますね(笑)。

「入ってますね(笑)。佐々木のレコーディングの段階で『ガヤを入れよう』ってけっこう盛り上がって。今回ラップなんですけど、ラップって言ってもいろいろあるからどのように照準を定めようかと考えていたんですけど、最終的にはガヤがいっぱい入ってる今っぽい感じを出したいなと思って。佐々木はガヤを入れるのが得意だから、ちょっとやってみてよとお願いして」

 

──そこはもうフリーで?

「ですね。フリーでいっぱいやってもらって、それを全部使っちゃえって(笑)。で、それをさかなさんが聴いて『そう来たならこっちも入れます』」って、いっぱい入れてくれて。そこはもうお任せでした。今回もミックスからマスタリングまでさかなさんにやってもらいました」

 

──ラップバトルが軸にあって、すごくファンキーなギターカッティングだったりベースの不穏なうねり具合もありつつ。でも男女のデュエットで痴話げんか的なやりとりというフォーマットは日本の古の歌謡曲を思わせるものでもあったり。

「デュエットの王道ですよね(笑)」

 

──(笑)いろいろな面白さがミックスされつつ、でもビートは現代的で。これはほんとにエイプロならではのミクスチャーポップだと思いました。ジャケットの元カレのイラストからして「これは?」と引き込まれるわけですが。

「ジャケットやMVのイラストもいいですよね。イラストは引き続きINPINEさんで、今回映像を担当してくれたのがなかにし(PHZY)さん。なかにしさんはINPINEさんとはまた違う武器を持っている人で、映像全体にスピード感があってかっこいい。それもあいまってテンションが上がる感じですね。奇妙なテンションの上がり方が面白いです」

 

──そして、この楽曲で「りすちゃんの元カレはヤンキーだった」ことが判明します(笑)。しかも2000年代初頭からからタイムスリップしてきたという。

「この3部作、次の話は今のところ予定していないんですけど、俺のなかでの設定としては、その後、彼氏のほうは実際に2000年代初頭に戻ってしまうんですよ。それでりすちゃんは悲しみに暮れるんだけど、時が過ぎてまた現代に戻って来るのか、あるいはりすちゃんがそっちの時代に行くのか──そうやって劇場版みたいに広がっていく展開も面白いかもと思っています」

 

──なるほど。スピンオフ的に彼氏のほうの物語を描いても面白そうです。

「ヤンキーの曲みたいなのを作ったりとか(笑)。2000年代のヤンキー曲っぽい感じで」

 

──今回の楽曲はもちろんエイプロの新機軸ですけど、佐々木さんやさかなさんにとっても新境地を開くような楽曲になりましたよね。佐々木さんは楽曲についてどんなことを言っていましたか?

「かっこいいって言ってくれたので嬉しかったですね。ラップのフロウとかって、本来フィーチャリングで参加してくれる人が自由にやるじゃないですか。でも今回はオレが仮に歌ったのを事前に送っていて、それに対して『ここはこういうフロウにしたらどうですか』とか動画を送ってアイデアを出してくれたりして。かなり協力的にやってくれてありがたかったです」

 

──リリックはeijunさんが全部書いているんですよね? 佐々木さんのバースは佐々木さんがリリックをつけているというのではなく。

「そうですね。ラッパーの人をフィーチャリングするとそうなることが多いですけど、これはストーリー設定があるので自分が全部書いてます。キャラ設定として、このヤンキーの元カレがいた2000年代初頭は、ヒップホップがヤンキーの間でも流行っていた頃なので、佐々木のパートはたくさん韻を踏むんですよ。本気でヒップホップが好きなヤンキーという設定なので。でもりすちゃんは全然ヒップホップは聴かない子なので、さかなさんのバースでは全然韻を踏んでないんです」

 

──なるほど。サウンドは今回もeijunさんが全パートを手がけている?

「そうですね。ベースが不穏に鳴っているのはサイバーパンクですね。ちょっとレトロフューチャー的なサウンドにしようっていう感じで。サイバーパンクなサウンドってなんか不穏じゃないですか。あとはそこにギターカッティングを足したいなとか」

 

──男女の掛け合いで痴話げんかっぽい内容となると、すごくベタな雰囲気に陥りがちだと思うんですけど、この曲にそういうダサさは一切感じないんですよね。

「嬉しいです。そこは気をつけて作っていきました。あと4つ打ちにラップを乗せてるヒップホップアーティストのフロウをいろいろ聴いたりして、元カレのほうのフロウはその感じも取り入れているので、けっこう本格的なフロウになっていると思います」

 

──今回「りすちゃん3部作」というコンセプトでしたが、eijunプロジェクトというものを思い切り濃縮して表現する3部作にもなったと思うんですよね。この3部作、やりきってみて今どう感じてますか?

「自分はあまり結びつかなそうな要素同士を結びつけて構築することが好きなんだなって改めて思いました。自分がもし映画監督だったら、ストーリーで感動させることはそれほど好きではなくて、印象的な場面がたくさんあるものを作るんだろうな、とか考えましたね」

 

──確かにエイプロの楽曲はパートごとに意味とか風景があって、それを統一するストーリーはあとから浮かび上がってくるというようなイメージがありますよね。

「そうですね。それが自分の癖というか。今回の3部作を全部で長い1作品として捉えると──というか、3曲足しても15分にもならないんですけど──そこにある場面の積み重ねみたいな曲の構造だなって自分でも思いましたね」

 

──普通だったら唐突すぎてつながらないようなところを形にしているのが面白いんですよ。普通、“ねたふりす”からここに飛ばないですもん(笑)。

「ですよね(笑)。でも『ここにこんなシーンや設定が挟まったら、実はここからここに飛べるよね』みたいなことを考えるのが好きなんですよ。そういう自分のフェチに気づいたのはありますね。毎回ちょっとずつ無茶な設定を入れていくことでより自分がイキイキしてくるっていう、自分自身の盛り上げ方にも気づいたというか(笑)。結局、物語としての着地にあまり興味がないんだろうなって思います。作家として」

 

──最初から絵が描けているんじゃなくて、その時々でもっと面白いほう、もっと意外なほうへとブラッシュアップしていくやり方だから、どこか実験的なポップスになっていくんですかね。

「エイプロを始めてからずっと早いペースでリリースし続けてきているので、作業自体のスピードがすごく上がっていることも関係していると思います。ギリギリまで他の方向性を模索できる、直前まで面白そうなほうを想定して変更できるのはエイプロの強みで。もし作業に時間がかかるんだったら、もっと早い段階からゴールを決め込まないといけないけど、途中で思いついたことにぱっと対応できるスキルが身に付いてきているから、制作途中での方向転換をむしろ楽しんでできているんだと思います」

 

──いやしかし「2000年代からやってきたヤンキー」にりすちゃんが惚れているという設定はじわじわきますね(笑)。

「『ねたふりす』で、居眠りするりすちゃんに肩を貸してる場面とか、あの彼氏がこの男だったかと思うと、かなり味わい深いですよね(笑)。りすちゃんが惚れるだけの何かがあるんでしょうね。だから『恋愛くたばれ同好会(仮)』でりすちゃんがちょっとグレた雰囲気を出してくるのは、この彼氏からの影響なんですよ。りすちゃん自身はヤンキーが何かもよくわかってないんですけど」

 

──ああ、だから怒った時のリアクションが。

「そうそう。“ふぁっ×”とか“びっ×”とか(笑)。ヒップホップではよく出てくるワードですけど、この男は2000年代のヒップホップ好きヤンキーなので、会話のなかで普通に口に出すんですよね。何かにぶつかったりしたら『ファー×ク!』とか言う。それを真似したりすちゃんが、『恋愛くたばれ〜』ではそういう口調になっているという」

 

──ああ、そういうストーリーも最終的に見えてくる。やはり荒唐無稽だと思える設定を力技でまとめあげるのがeijunプロジェクトの醍醐味かなと思います。それをしっかり見せた3部作でした。そして次回作も気になるところなのですが、いまはどんな展望を?

「順当にいけば、次の曲は季節的にもクリスマスソングになりそうです。エイプロ初のクリスマスソング。まだわかんないですけど、ふられた女子がサンタに慰められるような楽曲をイメージしています(笑)」

 

──また面白い切り口になりそうですね(笑)。楽しみにしています。

「ありがとうございます」

 

TEXT:杉浦美恵
 


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