DISC REVIEW

1stシーズンを締めくくる無償の愛を描いたラブソング

作詞・作曲 eijun
Vocal:さかな (https://twitter.com/sakana_tohno)
Illustration:いこちや (https://twitter.com/icochiya1414)
Movie:INPINE (https://twitter.com/INPINE_JP

 



MUSIC VIDEO

 

 




SPECIAL INTERVIEW

 

THE BACK HORNのギタリストとして知られる菅波栄純が、2021年4月に「eijun」名義でスタートさせたソロプロジェクト(#エイプロ)は、今回、13曲目の楽曲『Rondo (feat. さかな)』をリリースした。エイプロとしての1stシーズンを締めくくるこの楽曲は、eijunが初めて大きな愛、無償の愛を描くことに取り組んだスケールの大きなラブソングである。家族愛、恋愛、友情、様々な想いに寄り添う懐の深い愛の歌が「ロンド」という音楽形式をモチーフに、とても美しく描かれている。eijunはなぜ今、1stシーズンのラストという締めくくりにこの普遍的な愛の歌を書き上げたのか。eijunいわく「殻を破った」というこの曲が、なぜこれほど感動的に響くのか。2ndシーズンに向けての想いとともに、楽曲の持つテーマや制作背景を深掘りする。



 

──1stシーズンの最終曲となる楽曲ですが、普遍的でスケールの大きなラブソングになりましたね。ロンド(輪舞曲)というと、主旋律がループしていく音楽形式ですが、この『Rondo (feat. さかな)』も、その主題となるメロディがとても美しい楽曲です。これはどういった着想から生まれてきたのでしょう。

「きっかけとしては、これまで作っていた楽曲のストックがあって、そういえばエイプロでは親子の話をテーマとして書いたことがないな──というか、そもそもオレはこれまでの人生でそのテーマにトライしたことはなかったなと。でもいろんな視点で書いてみるっていうのはエイプロとしてのテーマでもあったので、それでちょっとやってみようと思ったんですよね」

 

──母娘の話と言われれば、まさにその大きな愛を歌った歌だと思うのですが、それだけでなく、いろいろな意味に受け取れる、様々な人のシチュエーションや環境に合致する、普遍的なラブソングですよね。

「そうなんですよ。明確に母娘を想定して書いた曲ではあるんですけど、実際にできあがったものは、いろんな人に当てはまりそうで。トライアルとして、母親の目線の愛を書いてみようっていうことで完成させたんですけど、スタッフからは『世代によって感じ方が違うかも』とか『ウエディングソングっぽくもありますね』という感想などもあって。あとは実家を離れて独り暮らしをしている人とか、遠距離で思い合っている人同士の関係性でも成立する歌だなと。この『Rondo』って、エイプロの曲のなかでも、いい意味でシチュエーションが抽象的なので、だからこそいろんな人が想像できる余地があるんじゃないかなと思っていて。それはまたJ-POPとしてのアプローチのひとつだなっていう感じがしています」

 

──幸せなラブソングとも受け取れるし、でも愛する人といつか離れてしまう日が来る、あるいはもう離れてしまっている、でも愛は永遠というイメージがあって。ロンド形式が、人間の輪廻みたいなところまで感じさせたりもして。

「オレもスタッフに言われて初めて『確かに結婚式っぽい感じもある』って思ったんだけど、出だしのAメロは逆に、膝を抱えた女子を想像していて、自分にコンプレックスを感じているような、そういう人に伝えたい言葉をここに書いているイメージでした。だから場面場面でもまた違う印象を受ける人がいるんじゃないかなと思ったりしています。1stシーズンの締めくくりの曲として、完成させてよかったなと思います。自分自身はちょっと、一般的な家族像とはズレた家族だったこともあって、これまで親子とか家族をテーマにした作詞は避けてたところもあったんですよ。THE BACK HORNだと、マツ(松田晋二/Drums)が書く曲に輪廻転生していくような曲があるけど、オレには無理だなって思ってた。むしろ刹那的な瞬間のこと──ここに缶コーヒーが置いてあって、みたいなことを書くほうが得意なので(笑)」

 

──ロンドという音楽形式は、やはりはじめからイメージとしてあったんですか?

「まず母娘の曲となると、大きな愛を想像して書き始めるんですけど、世代がつながっていく家族のイメージがあって。それがすごくロンドっぽいなと思ったんです。これはもう恋愛としてだけの愛の話じゃないなって。それを思いついたときにメロディも繰り返し感があるといいなと思って、A メロとサビ は、 出だしのメロディは一緒だけど転調して盛り上がっていく。そういう構造にしたいと思いました」

 

──ただ単純にテーマメロが繰り返されているわけではなくて、その裏で鳴る音像が絶妙に変化しているっていうのが、この楽曲のテーマにすごく合致していると思います。

「そうなんです。この曲は渾身の作というか、いい曲ができたという手応えがあります。好きなんですよね。自分でも」

 

──設定したテーマが実際のeijunさんのなかにはないものだとしても、だからこそ、多くの人に当てはまるような広い視点を持つ楽曲になったというのはあるかもしれないですね。

「それはほんとにそうで、少しのズレというか、微妙な滲みみたいなものにポップの秘訣っていうのはあって。ちょっとズレてるからこそ聴いてもらえる範囲が広がるというか。若干の無茶設定みたいなものに飛び込んで行くのも、作家としては良いことなんだなと思いましたね。オレにとっては『Rondo』みたいな普遍的なテーマこそが無茶設定だったんだなって気づきました(笑)。ほかの人からすれば、いつもエイプロでやってることのほうが無茶設定だと思うんですけど」

 

──今回のボーカルはさかなさんですが、歌声の切なさや表現力はちょっと凄いものがありますね。

「いいですよね。歌が送られてきたとき、これは泣くわって思いました。凄まじい表現力」

 

──声の揺らぎとか震えみたいな部分で、すごく繊細に表現している。これはeijunさんから細かい指示を入れたりしたわけではなく?

「なかったですね。実は今回、リリースのタイミングが少し後ろにズレたこともあって、自ら1回録り直してくれてるんです。締め切りが延びたなら、もっとやれるかもしれないって。時間があるならやれるまでやりますよと。ありがたいですよね、ほんと。さかなさんがすごくストイックに突き詰めてくれたので、オレから言うことはもう何もないというか」

 

──ロンドって広い意味で言えばダンス音楽で、その音楽形式にシンセや打ち込みで、現代的なダンスチューンの要素を取り入れるのがこの曲の面白さでもあると思うのですが、今回サウンド面ではどういうところを目指しましたか?

「ロンドということでサウンド的にも繰り返し感が欲しかったので、ど頭から聴こえるストリングスの、スタッカート気味に跳ねるような音を全編にわたって入れているんですけど、あの音色を探すのにかなり時間がかかりました。このテーマにはこの音だというイメージが強くあったので、探しましたね(笑)。それであの音色を見つけて。オーケストラっぽさやクラシカルなムードはその音に任せて、あとはモダンな、太いキックとかを入れていったらバランスいいんじゃないかなと」

 

──クラシカルな雰囲気とモダンなビートが融合して、洗練されたポップスとして完成されていますよね。

「たとえばコード進行がクラシックで、ダンスミュージックのビートが入っているのはポップスの歴史のなかでは王道としてあって。この曲の場合は、コード進行はクラシックとは言い切れないですけど、なんとなくそのようなテーマ感がある。それでリズムトラックの世界観 は ダンスビートという仕様になっているんですけど、その構造を気持ちいいと思うツボって、今も昔も変わらないんですよね。90年代にもそんな感じがあった。洋楽とかでも、インディロックにもそういう流れはありますし。時代によってもちろんアレンジのツボは変わってきてはいますが、いまだにこの構造はポップのど真ん中なんだなと思います。でもそれを狙って作ったというより、今回はそういうふうに組みわせていったら王道になっていたという感じです」

 

──歌詞についてはさっきも言っていたように、自分にはないシチュエーションでの作詞ということで、どんなことを意識して書いていったんですか?

「『全肯定感』というか。愛する人に対して全肯定する歌詞というのが、もともとは自分の中にないんですよね。でも俺はRADWIMPSがすごく好きなんですけど、最初に彼らの、他者を全肯定するような歌詞を見て衝撃が走って。それまで自分は、簡単に言えば、攻撃的な言葉で目や耳を惹きつける手段しか持っていなかったので、RADWIMPSを初めて聴いて、君がいてくれるから自分が完全に救われたくらいのことを明確に言ってる歌詞を見て、こんなに美しいんだなって思えて。そこから、他者を肯定する言葉をはぐらかさずに言える、そんな人間になりたいと思うほど、それくらい影響を受けました。でも結局ずっと、主にTHE BACK HORNでの作詞では、それはできないままで来ていて。どうしても自分の得意技もあるし、シニカルで破壊的なほうをやりたくなるので。でもエイプロで、自由度高く何を書いても正解というところでやっていて、このタイミングで、ほんとに相手に伝えたい、相手を肯定する言葉が詰まった曲を書きたいって、そのときによみがえってきたんですよね。今回はそれができたような気がしています」

 

──だから無償の愛を描く楽曲ができあがったんですね。

「そうですね。そういう意味では殻を破ることができた楽曲だと思います。ずっと斜に構えないとかっこがつかないんじゃないかと思ってたフシがあったんですけど。なんとなく、エイプロをやっていくうちに殻が破れていったという感覚ですかね。リハビリじゃないですけど、もう結構ひねくれ曲がってたから、なんというか、それこそ無償の愛みたいなものだって、否定はしないしこの世にあるとは思っていながらも、オレにはわからないと思ってたところがあったんですよ」

 

──どこか綺麗ごとなんだろうと。

「そう。ついつい思っちゃう人間なので(笑)。という殻を、少しずつ打ち破ってきたのがエイプロの1stシーズンだったのかもしれないです」

 

──ああ。だからこの曲はすごく画期的なんですね、エイプロとして。王道のラブソングで、書かれていることもシンプルなんだけど、eijunさんがすごく逡巡して書いてる言葉だから、全然綺麗ごとじゃなく、とても説得力のある歌で。この曲もリミックスはリリースされるんですよね?

「はい。4つ打ちで完全にダンスっぽくなった感じですね。スケールの大きなダンスチューンみたいな感じになってます」

 

──楽しみにしています。あらためてこの1年あまり、eijunプロジェクトとしての1stシーズン、全13曲のリリースを終えて、いま振り返ってみて、どんなことを感じていますか?

「そうですね。自分がなんでこういうことをやり始めたのかって、やっぱり後にならないとわからないものだなと思いましたね。やり始めた時は、感覚的に前に進んで作ったものに対して、なんとか説明しようとして言語化してはいたんですけど、完全に客観的な意見ではなかったなと。いま思うのは、やっぱり殻を破りたかったというのが大きかったんだと思います。J-POPをやるとか、女性目線でとか言っていますけど、そういうことより、結局自分が自分の殻を破りたかったんだなと。殻を破ったついでに、いよいよ年齢や性別とかあまり関係なく、音楽だけでつながることができる時代が来るって、今は本気で思ってます」

 

──きっと『Rondo』みたいな、何かが巡っていくような曲を作りあげたから、そういう思いに着地したのかもしれないですね。

「ほんとそうですね。年齢や性別を超えてというのは、今漠然と思っていることなので、また1年後には、あのとき言ってたあれって、たぶんこういうことなんだなって説明できるようになってると思います。今はまだその感覚をうまく言語化できなくて、そういう感覚があるだけですけど」

 

──今後はまた、月イチくらいのペースで新曲のリリースが続いていく感じですかね。2ndシーズンに向けて、どんなことを考えていますか?

「1stシーズンはアラカルト的にリリースして、それぞれ曲調もテーマもバラバラで、曲もストックとしてあったものをどんどん出していったという感じだったんです。2ndシーズンは、ストック曲ではなくて、その時点から書き始めていくものになるので、全部新曲で構成されていくことになるし、コンセプト決めから始めることになるので、『今これをやったら面白い』と思うようなものをどんどん作っていく感じになると思います」

 

──より自由度高く、時代性を映す楽曲が増えていきそうですね。

「そうですね。楽しみにしていてください」

 

TEXT:杉浦美恵
 


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