DISC REVIEW

現代を映し出すポップスでありながら、幅広い世代の心を掴む普遍的な青春賛歌!

  • eijun「卒業式の日、告ります。 (feat. みゆはん)」
  • 2022.2.9 RELEASE
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卒業式の日、告ります。 (feat. みゆはん)   


 

 CREDIT  

作詞・作曲 eijun
Vocal:みゆはん (https://twitter.com/bknb_mew)
Illustration:木目りん (https://twitter.com/mokume001)
Movie:INPINE (https://twitter.com/INPINE_JP

 


 


SPECIAL INTERVIEW

 

THE BACK HORNのギタリスト、菅波栄純によるeijunプロジェクト(#エイプロ)。その12作目のリリースとなる『卒業式の日、告ります。 (feat. みゆはん)』は、エイプロ初の「卒業ソング」。卒業の日が近づく学校の景色、体育館の空気、告白する勇気を持てなかった3年分の想い──これ以上ないほど共感性の高いシチュエーションとテーマを、「予告告白」というeijunならではの切り口で描き切ったラブソングは、ひとつの短編小説のように鮮やかに青春時代を映し出す。現代を映し出すポップスでありながら、この『そつこく』は幅広い世代の心を掴む普遍的な青春賛歌としても完成されているのだ。
今回のインタビューで、実はこの楽曲にはeijun自身の経験や思い出が色濃く反映されているということがよくわかった。eijunとして(菅波栄純としても)そうしたソングライティングは非常に珍しいものだが、この曲がどのようにして、自身の「青春」をも内包した作品になっていったのか、その興味深い背景を紐解く。



 

──まずイントロのピアノの音色だけで、あの体育館の凜とした空気感が思い浮かびます。今回、徹底して卒業式を想起させるサウンドになっていて、ストリングスの音に重なるeijunさんのクリーントーンのギターサウンドにも、すごく青春感を感じます。

「イメージとしては卒業式ライブなどで演奏していそうな曲というか。ギターの音は、自分でも珍しく録り直したんですよ。いつもはデモのギターをそのまま使うんですけど。今回のデモの段階では、自分がTHE BACK HORNなどで弾くような、パワフルな音だったんですけど、もっと軽やかな爽やかな音にしたいなと思ったので、こだわって録り直しました」

 

──ピアノもeijunさんが?

「あれは打ち込みで入れています。卒業式の合唱=ピアノの伴奏というのが自分のなかにはあって、ピアノもあとから足したんですよ。もともとのデモは『スタートライン(feat.アンジェリーナ1/3)』のような編成で、ドラムとギターとベースだけの、かなりロックな感じだったんですよね。そこから『卒業』というテーマで書き進めていくときに、改めて要素を付け足していきました」

 

──後半の、みゆはんさんのスポークンというか、口上というか、あそこもこの楽曲のひとつのハイライトですよね。

「この曲を書いている段階で、どうしてもああいうのを入れたくなってしまって(笑)。あそこで間奏を入れたい、間をあけたいというのは当初から決めていて、ギターソロでギューンっていうのでもいいんですけど、ここで語りが入ったら面白いだろうなあって、セリフを考えてたら楽しくなりまして(笑)。それを作ってる段階で、このニュアンスをうまく表現してくれる、かわいい声のボーカルがいいなっていうイメージだったんですよね。この曲をみゆはんにお願いしたいという想いは、アレンジ段階で浮かんできました」

 

──このスポークンのパートのあとに転調が入って、ラストに向かって想いが加速していくような展開。イントロからラストまでの一連の流れがしっかり練られていて、eijunさん的にも完成した時はかなりの手応えがあったのでは?

「ありましたね。今どきのJ-POP要素もあるんですけど、ドラムがシンコペーションしてメロディと合わせるとか、そういう感じってわりと自分の青春時代のロックっぽいというか、ちょっと昔の感じなんですよね。今だったらメロディがシンコペーションしていても4つ打ちでクールにリズムを合わせるのが多いんですけど、みんなでドーンと合わせる熱い感じっていうのは久しぶりだなと思って、やってみたら楽しかったんです。その時点でこの曲いいなって思っていて。その上にいろいろな要素を乗せていったときに、また好きになったし、みゆはんが歌ってくれたのを聴いて、これはいい曲になったなという実感が湧きました」

 

──みゆはんさんには、菅波栄純として過去に何曲か楽曲提供をしていますよね。その提供曲のなかでは、『エチュード』の青春感が、わりと今作に近いテーマかなと思うんですが。

「そうですね。『エチュード』はアニメのオープニング曲になったこともあって、自分のなかでも思い出深い曲で。また昨年10月にも彼女の作品で「脳内リピートエンドレスソング」という楽曲で携わって、そこからさらに#エイプロでもご一緒したいという想いもありましたね。いろんな声を出せるし、言葉に対するセンスというか、この言葉に対してはこういう歌い方をするのが正解っていう選択のセンスが高いので。だからみゆはんが歌ってくれると決まったときに、これはもう心配ないなって思いました」

 

──ところで今回は「卒業ソング」という普遍的なテーマでありながら、「予告告白」という意表を突くシチュエーションを持ってきたところにeijunさんの面白さを感じます。でもそれがすごくリアルに描かれていて。

「 実は、『予告告白』はオレが実際にしたことがあるんですよ。高校生の時に」

 

──ええっ? そ、それは詳しく訊いてもいいですか?

「全然いいですよ。まあ、卒業式の日ではなかったですけど、『予告告白』になってしまったことがあって。だから実話なんですよね(笑)」

 

──珍しい(笑)。eijunさんの体験が元になっている歌詞だったとは。

「珍しいですよね(笑)。恥ずかしいんですけど。高校のとき好きな子がいて、告白したかったんですけど、全然うまくいく気がしなくて、どっちみちこれはダメそうだなと思っていたんですよ。何度か告白しようと思いながら、また今日もできなかった、明日こそ告白しようって、告白できない期間が続いていて。そこで、自分に発破をかける意味で──今となってはなんで自分がそうしたのかはわかんないんですけど──その子にまず電話したんですよ。『明日学校来る?』とか、ほんとにどうでもいい話をしていて。それで相手に『だからなんなの?』って言われて、つい『明日、告白しようと思ってる』と言ってしまったという(笑)」

 

──ああ、だから今回の歌詞は、いつにも増してリアルに感じられるんですね。

「まさかの実話でした(笑)。それで、卒業式というシチュエーションとラブコメ要素を絡めようとして、なんとなく『予告告白』を入れようと思ったその流れから、間奏のスポークンのところも、告白の前口上のような雰囲気になって。まあ、そんな口上を言う人は実際にはいないだろうけど、そこで『予告告白感』を膨らませていきました」

 

──でもこれ、とっても可愛らしい曲だと思います。この主人公にすごく共感できる。それで最後、この告白の行方がどうなったかというのは、想像の余地を残してあって。

「そうですね。雰囲気的にはうまくいってそうですけど、そこは明確には書かないようにしました。“物語は続く”って1番のAメロのラストで言っているし、卒業しても続くんだよっていう余韻が欲しかったので。それは、この恋がうまくいってふたりは続いていくというニュアンスにもとれるし、卒業しても人生がここから続いていくというニュアンスも込めて。まあでもやっぱり、自分が単純にラブコメとかを読んでいて、主人公が好きな人とうまくいって付き合い始めると、急にその先は読む気がなくなっちゃうみたいなところも関係してそうですけどね(笑)」

 

──2コーラス目で入る合唱風のコーラスはどういうふうに重ねているんですか? みゆはんさんの歌に重なっているのはeijunさんの歌声ですか? 

「そうです。なるべく自分の声を入れたくなかったんですけど。どうしても男女混声というイメージが自分のなかにあって。これはやるしかないなっていう感じで歌いましたね。最初はみゆはんパートのコーラスを入れてもらって、それをもらってオレが重ねて。なんとなく軽い気持ちでやるとは言ったものの、自分の歌は何回も録り直しました」

 

──でも、みゆはんさんとeijunさんの声だけで、すごく学校での合唱のニュアンスが出ていますよね。

「そうですね。自分の学生時代を思い出しました。中学時代、クラス対抗の合唱があって。オレはそういう自覚はなかったんですけど、けっこう声が大きくて目立ってたらしくて、そのあと先生に呼ばれて『菅波くん、ちょっと歌ってみないか』と声を掛けてもらって、合唱部がコンクールに出るためのヘルプ部員として誘われたんですよね。最初はなんでオレなのかなって思いながらやってたんですけど、結局、県大会まで出て、そこで負けたときは泣いてましたね、悔しくて(笑)」

 

──またもや意外なエピソードが(笑)。

「表面的には『オレはただの助っ人だから』とスカしてたわりに、心のなかではエンジョイしてたんですね、青春を(笑)」

 

──それも含め、この曲は珍しくeijunさんの実際の青春時代が反映されたものになってるっていうのが興味深いですね。

「そうですね。意外と反映されているんですね(笑)」

 

──MVは学校の風景が効果的に盛り込まれて、主人公の表情も含めて、思い出がグッとこみ上げてくるような仕上がりです。今回はINPINEさんとどんな話し合いを?

「今回キーになったのはやはり『卒業式ライブ』というところで、主人公はギターを持ってるのがいいんじゃないかと。ライブのシーンは出てこないですけど、体育館が出てきたり、背景もいっぱい作ってくれて。今回も労力がかかってると思うんですよね。イラストは、『きみがじごくにおちるなら (feat. POCHI)』のときにもお願いした木目りんさん。ギターも描いてもらいたかったので、そこもしっかり描ける人ということで依頼したんですけど、とてもかわいい仕上がりでした」

 

──主人公が持つギターは、菅波栄純の象徴でもある赤いグレッチですね。

「そうなんです。最初、INPINEくんに『どんなギターにしますか?』って聞かれて、しばらく考え込んでしまって(笑)。オレと全然関係ないギターだと、『なぜこのギターに?』って聞かれたときに困ってしまうし、今回それを決めるのが一番難しかったかもしれない(笑)。さらっとINPINEくんが勝手にストラトとか持たせてくれてたら、オレも何も疑問に思わないんだけど、『何のギターにしますか?』って聞かれてしまうと、そこに何か意味が生まれてしまう気がして。だから最初は恥ずかしかったんですよ。オレのやつ持たせてくださいっていうのは。でもやっぱそうだよなあって」

 

──たまたまなのかもしれないですけど、実はこの楽曲はeijunさんのパーソナルな経験や思い出が反映されている楽曲だとすれば、そこで主人公が赤いグレッチを持っているっていうのは、正解だったんじゃないかと思うんですよね。

「うん。確かにそうですよね」

 

──で、この曲もリミックスバージョンが楽しみなんですが。どんな感じになりそうですか?

「『そつこく』のリミックスは、ちょっとゲームミュージックのような、ローファイ感のあるサウンドになります。80年代にセガのメガドライブというゲーム機があって、そのメガドライブのドラムの音を使っています。コルグが出しているソフトシンセのなかに入ってるんですよ。もともとコルグがNintendo Switch用に作ったコルグガジェットというソフトがあって、それを実際にPCでも使えるバージョンがあるんです。そこに実際のゲームの音色を移植しているシリーズがあって。今回のリミックスではそのメガドラのゲームの音色を使っているんですけど、その時代のゲームを知らない人でもすごく新鮮に聞こえると思うし、もしかしたら『あれ?これってもしかしてあのドラムの音じゃない?』と懐かしく思う大人の人もいるんじゃないかな」

 

──なるほど。また別の視点で懐かしい青春感を感じさせてくれる楽曲になってるんですね。エイプロとしては、そういうチップチューン的なリミックスはまた新鮮ですね。

「そうですね。かわいい仕上がりになってると思います」

 

──eijunプロジェクトとしては、2021年4月の『あいしてぬ (feat. さかな)』から、今回の『卒業式の日、告ります。 (feat. みゆはん)』までで全12曲。ここで第1クールの区切りという感じだと思うのですが、次のセカンドシーズンへの展望として、いま思い描いていることがあれば教えてください?

「ファーストシーズンでは、視聴者の反応も含めいろいろ吸収できたので、ある意味、今回の『そつこく』もそうですけど、今後はもっと狙いを定めて仕上げていくような制作になっていくと思っています。『この曲良いから聴いてみてほしい』というリリースではなくて、もう少し狙って作った曲が増えていくかなと。リミックスでもいろんなことが試せたというのもあって、そういうサウンド的なチャレンジがオリジナルのほうにもフィードバックして、自然に融合したポップスになっていくかもしれないです。それこそチップチューン的なサウンドをオリジナルのほうにも取り入れたり、そういう流れはありそうだなと。いろんな曲が出てくることは変わらないし、基本はポップスとして楽しめるものになるとは思うんですけどね。例えば、J-POPだけど聴く人が聴いたら『これってフューチャーソウルだよね』とか、そういう重層的なものになっていくような気がしています。ハッシュタグでいえば、『#eijun』、『#エイプロ』、あと曲によって『#片思い』みたいなタグはこれからも付くと思うんですけど、そこに『#フューチャーソウル』っていうタグなんかも付いてくるような。アレンジとか、そういう部分がもう少し成熟してくるんじゃないかなと思っています。楽しみにしていてください」
 

 

TEXT:杉浦美恵


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