LIVE REPORT

「京都音楽博覧会2022」ライブレポート

 

京都音楽博覧会2022 in 梅小路公園
2022.10.9@京都梅小路公園 芝生広場


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 くるり主催のライブイベント『京都音楽博覧会2022 in 梅小路公園』が10月9日に京都・梅小路公園 芝生広場で開催された。

 

『京都音楽博覧会』は、くるりが2007年から京都市中心部にある梅小路公園を舞台に毎年開催しているイベントで、これまでに国内外から多くのアーティストを招聘。だが、近年の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年は京都の老舗ライブハウス・拾得、2021年はくるりの母校である京都・立命館大学にある以学館と学生会館から配信ライブとして実施。今年は梅小路公園での開催が3年ぶりに実現した。

 

イベントは岸田繁(Vo&Gt)、佐藤征史(Ba&Vo)による恒例の開会宣言で幕開け。通算16回目にして久しぶりの現地開催に、佐藤が「音博が始まった年に生まれたお子さんも来てくれてるかもしれないよね」と感慨深げに会場を見渡し、岸田は「今年は梅小路に帰ってくることができました、ただいま!」と満場の観衆に感謝を告げる。

 

そして、「今年は若いアーティストに出演していただこうというとき、真っ先に名前が挙がって。くるりの遺伝子を引き継ぐところもあり、さっき会ったら何だかキラキラしてました(笑)」と岸田から紹介を受けたトップバッターは、マカロニえんぴつ。冒頭からくるりの「尼崎の魚」を一節カバーしリスペクトを表した後も、「レモンパイ」「洗濯機と君とラヂオ」等ライブ映えするナンバーを連発。MCでは、「ロックにおいて先陣を切って道を切り拓いてくれて、曲を作る上では教科書にもなっている。ずっとリスナーだったので、呼んでいただいたときは感無量でした」と、はっとり (Vo&Gt)が思いを述べる。後半戦も、岸田がはっとりとの雑誌の対談企画でフェイバリットに挙げた「恋人ごっこ」や、人気曲の「ヤングアダルト」などを惜しみなく披露し、「大好きなくるりがくれた出会いに感謝します。この後はお客さんとして楽しみたいと思います。もっともっと京都に来たいと思いました」と、最後の「なんでもないよ、」までみずみずしいメロディを届け続けた。

 

今年は全国各地のフェスのラインナップに名を連ね、先述のマカロニえんぴつと共に2022年を代表するアーティストの一組と言っても過言ではない二番手のVaundy。岸田が「2022年、一番歌がうまいと思った」と称賛すれば、佐藤が「本当に老若男女のファンがいるのがすごい」と感嘆の声を上げるのも納得の才気溢れるパフォーマンスを冒頭から展開し、「不可幸力」「踊り子」では自ずとハンズアップが巻き起こる。くるりとも縁の深いドラマー・BOBOのリズムに支えられ、きらめきと切なさが同居する「恋風邪にのせて」や叙情の極みたる「走馬灯」など、比類なきソングライティング力をまざまざと感じさせていく。その後も、「裸の勇者」「東京フラッシュ」とやる曲やる曲キラーチューンとも言うべきセットリストで畳み掛け、「雨降り過ぎじゃね?」と時折、客席を気遣いながら、「ラストスパート、いきましょうか!」と「花占い」「怪獣の花唄」で怒濤のエンディング!2000年生まれの次世代のポップスターここにありと証明した、初出演にして鮮烈なステージだった。

 

三番手のAntonio Loureiro & Rafael Martiniは、今年唯一の海外アーティスト。10種類近い楽器を演奏するマルチ奏者・シンガー・コンポーザーのAntonio Loureiroは2015年、コンポーザー・シンガー・鍵盤および弦楽器奏者のRafael Martiniは2017年の『音博』でも素晴らしい演奏で観客を魅了したが、今回は現代ブラジル/南米音楽をリードする2人による最強タッグに。岸田も「すごい人とすごい人が一緒にやるとすごい音楽になる」と、その出番を前に誰より高揚している様子で、降雨による機材トラブルに見舞われたものの、その雨がライブをよりドラマチックに演出。舞台中央に向かい合う形で鍵盤とドラムセットが設置され、「Universo」ではRafael、「Me dê a mão」ではAntonioとボーカルをスイッチしつつ、インプロヴィゼーション感のあるスリリングな旋律とビートを創出。静寂と雨音が交差する曲間すら美しい、豊潤でメロウな全6曲の音楽体験となった。

 

岸田も「もう天才でしょ」と太鼓判を押すスリーピースロックバンド・SHISHAMOも、今年の『音博』を象徴する若きアーティストの一組。とは言え、すでに歴戦のライブバンドとしてのキャリアを持つ彼女たちは、1曲目からくるりのカバー「THANK YOU MY GIRL」をさらりとやってのけ、続く「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」でも、余裕と貫禄すら感じる堂々のステージング。宮崎朝子(Gt&Vo)は、「来月からCDデビュー10周年なんですけど、本当にいろんなことがあって。でも、こうやって素敵なステージに呼んでいただけて、間違ってなかったんだなと思えました」と、くるりへの敬意をカバーだけでなく言葉でも伝え、「夏の恋人」「ハッピーエンド」「夢で逢う」と胸が締め付けられる珠玉のラブソングのゾーンには、オーディエンスもグッと息を飲む。一転、終盤戦はアグレッシブなバンドサウンドで疾走する「狙うのは君のど真ん中」を皮切りに、「明日も」「明日はない」と駆け抜ける!パワフルでタフな存在感に魅了されっぱなしの40分間だった。

 

くるりより上の世代のレジェンドとのマジカルな化学反応も『音博』の見どころの一つだが、今年その役を担うのはご存じ、槇原敬之。佐藤が「知ってるけどライブで見たことがない曲を味わえるのが『音博』」と言えば、岸田が「中学生ぐらいの頃に夢中で聴いてました」と返す期待感を受け、いきなり涙腺を刺激する名曲「遠く遠く」からライブはスタート。梅小路公園に手のひらが舞う絶景を生み出したかと思えば、あのピアノのイントロに一同がざわめいた「どんなときも。」と、たった2曲で今日ここにいてよかったと心底思わせる、槇原敬之の音楽の力に包まれる。「くるりのおかげで、今日のこの場所でコンサートができること、本当に幸せに思ってます。見えてます~?(と手を振る) ちゃんと届くように歌いますので」と、見る者を優しくすくい上げるMCに続いては「LOVE LETTER」へ。先の佐藤の言葉通り、脳裏に刻まれたグッドメロディが次々と目の前で蘇っていく。レパートリーから新旧のアーバンポップを聴かせた「Fall」「Hungry Spider」、無数に伸びる手が声の代わりとなった「僕が⼀番欲しかったもの」、そして、国民的ヒット曲「世界に⼀つだけの花」と、曲を追うごとにピークを超えていく。ラストは「新しい世界にみんなで行こうという気持ちで作りました」と語った壮大で力強い「宜候」、愛に満ちた「四つ葉のクローバー」で、くるりへとバトンをつないだ。

 

いよいよ『音博』もフィナーレへ。ここでピースの又吉直樹が登場し、「今日は皆さんと同じ一人のくるりファンが、どのようにくるりと関わってきたかを話します」と、椅子に腰掛け朗読を始める。18歳の頃、くるりの「東京」とラジオで出会い、上京した後も、お笑い芸人としての転機に、恋人とのささやかな日々に、何者でもなかった自分のそばに、常にくるりの音楽があった。ここにいる多くのファンと同じように。

 

又吉が重ねたそんな言葉の先に、切々と響くギターが導いたのは、『音博』の開催記念シングルにもなった「真夏日」。土砂降りの雨に打たれ、どこか物悲しくも温かいメロディが広がっていく。淡々と奏でられるギターリフが今なおどうしようもなく胸を揺さぶる「東京」に、聴けば聴くほど心に染み渡る「ハイウェイ」に、まばゆい閃光を浴び放った「潮風のアリア」の神々しさに、何度も何度もくるりのスペシャルさを再確認。「琥珀色の街、上海蟹の朝」に「ばらの花」にと、そのコンポーザーとしてのすさまじい才能に打ちのめされる楽曲群に身を委ねる幸福を、3年ぶりの梅小路公園で改めて思い知った人も多かったことだろう。岸田が「天候はあいにくとなりましたが、皆さんのおかげで素晴らしい日になりました。ありがとうございました」とあいさつし、最後に「奇跡」を万感の表情で歌い上げる。

 

鳴りやまない拍手に応えたアンコールでは、「来年もできたらお越しください、ありがとう!一曲だけやって締めたいと思います。またね!」と、毎年『音博』を締めくくっている「宿はなし」を送り、16回目の宴は幕を閉じた。

 

Text:奥 “ボウイ” 昌史
Photo:井上嘉和

 

 

マカロニえんぴつ

 

 

Vaundy

 

 

Antonio Loureiro & Rafael Martini


 

 

SHISHAMO

 

 

槇原敬之


 

 

又吉直樹

 

 

くるり



 

 

くるり SET LIST

 

1. 真夏日 
2. 東京
3. ハイウェイ
4. 潮風のアリア
5. 琥珀色の街、上海蟹の朝 
6. ばらの花 
7. everybody feels the same
8. 太陽のブルース 
9. ブレーメン
10. 奇跡 

- EN -
宿はなし